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【第10回 AI】AIエージェント時代、GPUだけでは不十分? AMDの新技術「Helion」が示すAIサーバーの未来

生成AIの普及によって、企業のAI活用は新しい段階に入り始めています。
これまでの生成AIは、人間が質問を入力し、AIが回答するという使い方が中心でした。
しかし最近注目されているのは、**「AIエージェント」**です。
AIエージェントとは、人間から指示された目的を達成するために、AIが必要な作業を判断し、外部システムやツールを利用しながら、複数の処理を実行する仕組みです。

例えば、
「競合企業の情報を調査して比較資料を作成する」
「顧客から届いた問い合わせを分析し、回答案を作成する」
「社内データを集計して月次レポートを作成する」
といった業務を、AIが複数の処理に分けて実行します。
こうしたAIエージェントの普及によって、AIサーバーに求められる性能も変化し始めています。
その流れを象徴する発表が、2026年10月12日にありました。

AMDが発表した「AMD Helion(ヘリオン)」です。
AMDは、AIエージェント向けの新しいラック型計算基盤として、CPUとGPUを柔軟に組み合わせられる設計を発表しました。Advanced Micro Devices, Inc.

なぜAIエージェントにはGPUだけでは不十分なのか
これまでAIサーバーの性能を比較するときには、GPUに注目することが多くありました。
NVIDIA H100、H200、B200など、GPUの性能向上によって大規模AIモデルの学習や推論が高速化してきたためです。
しかし、AIエージェントではGPUが担当する処理だけでなく、通常のCPUが担当する処理も重要になります。
例えば、AIエージェントが顧客情報を分析して営業レポートを作成する場合を考えてみます。
最初に社内データベースへアクセスします。
次に必要な顧客情報を取得します。
その情報をAIモデルへ渡して分析します。
さらに分析結果をExcelやPDFにまとめます。
最後に担当者へメールで送信します。
この一連の作業のすべてをGPUが実行するわけではありません。
AIモデルによる文章生成や高度な推論にはGPUが活躍します。
一方、データベースへのアクセス、ファイル操作、プログラムの実行、外部システムとの連携などは、主にCPUが担当します。
つまりAIエージェントでは、
「AIの頭脳となるGPU」と「業務処理を進めるCPU」の両方が重要になる
ということです。

AMDが発表した「Helion」とは?
AMD Helionは、AIエージェントを大規模に運用するためのラック型計算基盤の設計です。
今回の発表で特徴的なのは、GPUを大量に搭載することだけを目的としていない点です。
AMDは、AIエージェントの処理内容に合わせてCPUとGPUの構成を変更できる仕組みを提案しています。
発表された主な構成は2種類です。

1.CPUを中心とした構成
AMDは、第6世代EPYCプロセッサを利用し、最大32,768 CPUコアを搭載できるラック構成を提示しました。
これはGPUを大量に搭載する構成ではなく、AIエージェントの実行や業務処理を担当するCPUを集中的に配置するものです。
AIモデルによる推論が必要な場合は、別のGPU計算基盤に接続します。
つまり、
CPUがAIエージェントの処理を進め、必要なときにGPUへ計算を依頼する
という構成です。

2.CPUとGPUを組み合わせた構成
もう一つは、AMD EPYC CPUとAMD Instinct MI350P GPUを一つのラックに組み合わせた構成です。
こちらは、AIエージェントの実行とAIモデルの推論を統合した環境として設計されています。
企業がAIシステムを自社環境で運用する場合などを想定しています。
AMD Helionは現在開発中で、パートナー企業による構成の提供開始は2026年11月を予定しています。AMD

AIエージェント時代はCPUの重要性も高まる

今回のAMD Helionで注目したいのは、AIの高度化によってGPUだけでなくCPUにも新たな需要が生まれていることです。
これまでは、
「生成AIを高速化するにはGPUを増やす」
という考え方が中心でした。
もちろんGPUの増強は、現在も重要です。
しかしAIエージェントでは、数多くのAIモデル呼び出しや外部システムとの連携が発生します。
例えば企業で100人がAIエージェントを利用する場合、100人の質問に回答するだけではありません。
1人の指示に対してAIが10回、20回と処理を繰り返すこともあります。
その結果、AIモデルへのアクセスだけでなく、データベース処理、API連携、ファイル処理などの負荷も増加します。
このような環境では、GPUだけを増設してもシステム全体の処理速度が向上するとは限りません。
CPU、GPU、メモリ、ネットワーク、ストレージを適切に組み合わせる必要があります。
AMD Helionは、こうしたAIエージェント特有の処理を意識した設計といえます。

Microsoftも独自AIチップ「Maia 300」を発表

今週、AMDと同じ10月12日にMicrosoftも重要な発表を行いました。
それが、次世代AI推論アクセラレーター**「Azure Maia 300」**です。
MaiaはMicrosoftが独自に開発しているAI向け半導体で、NVIDIAやAMDのGPUとは異なる製品です。
今回発表されたMaia 300では、AIの推論処理を効率化することに重点が置かれています。
Microsoftによると、Maia 300では前世代のMaia 200と比較して、
ラック単位のトークン処理量が最大7倍
電力当たりの処理性能が2.5倍以上
になるとしています。
また、既存の主要なGPUベースのシステムと比較して、1MW当たりのトークン処理量を40%増やせるとの見通しも示しています。
これらはMicrosoftが公表した性能比較・見込みであり、実際の結果はモデルや処理条件によって異なります。
Maia 300は2027年から大規模な導入が計画されています。Microsoft Azure

「トークン処理量」が重要になる理由
トークンとは、AIが文章を処理するときに使用する単位です。
生成AIは、文章をトークン単位で処理して回答を生成しています。
AIエージェントが普及すると、AIモデルを繰り返し利用する機会が増えます。
そのため今後は、
GPUやAIチップが1秒間に何トークン処理できるのか
だけでなく、
どれくらいの電力・費用で、その処理量を実現できるのか
が重要になります。
MicrosoftのMaia 300は、まさにこの点に注目した製品です。
NVIDIAもGPUの利用領域を拡大
一方、GPU市場で存在感を持つNVIDIAも、新しい技術を発表しています。
10月14日、NVIDIAは半導体設計・製造におけるAI活用を拡大するため、新しいCUDA-Xライブラリなどを発表しました。
新技術の一つである**「cuPotential」**は、原子や分子の相互作用をシミュレーションするAIエージェントの開発などに活用できます。
NVIDIAによると、初期テストでは既にGPU向けに最適化された処理を、さらに2~3倍高速化した事例があるとしています。
また、半導体製造装置メーカーのLam Researchでは、NVIDIAのNanoVDBを使用したシミュレーションで30倍の高速化を達成した事例も紹介されています。NVIDIA Newsroom
この発表から分かるのは、GPUの用途が文章生成や画像生成だけにとどまらないということです。
今後はAIエージェントに加え、半導体設計、製造工程、科学技術計算、シミュレーションなど、さまざまな分野でGPU計算需要が拡大していくと考えられます。

企業がAIを導入するとき、GPUサーバーは必要なのか?

ここで企業のIT担当者にとって重要な問題があります。
それは、
「AIエージェントを利用するために、自社でGPUサーバーを購入する必要があるのか?」
という点です。
結論から言えば、必ずしも必要ではありません。
例えばOpenAIやMicrosoftなどが提供するAIサービスをAPI経由で利用する場合、AIモデルそのものを自社で動かす必要はありません。
AIの推論処理はクラウドサービス側で実行されます。
この場合、自社では通常のサーバーを利用してAIエージェントの業務処理を実行することも可能です。
一方、独自のAIモデルを利用したい場合や、社内データを外部サービスへ送信したくない場合などは、GPUサーバーやGPUクラウドの導入を検討することになります。
例えば次のような使い分けが考えられます。

AIの利用方法 主な計算環境 特徴
外部AIサービスを利用 通常サーバー+AI API 自社GPUが不要な場合がある
独自LLMを社内で運用 自社GPUサーバー データやモデルを自社環境で管理
大規模AIモデルの学習 GPUクラウド 必要な期間だけ高性能GPUを利用
AIエージェントを大規模運用 CPU+GPUなどの組み合わせ 処理内容に応じて計算資源を分担

重要なのは、どの構成が優れているかではありません。
企業が実現したいAI業務によって、必要な計算環境が変わるということです。

GPUサーバーを購入する前にGPUクラウドで検証する

企業が独自AIを開発する際、最初から高性能GPUサーバーを購入することにはリスクがあります。
例えば、NVIDIA B200などの高性能GPUを使用する場合、サーバー本体の費用だけでなく、電力、冷却、ネットワーク、保守なども考える必要があります。
さらにAIモデルによって、必要なGPUメモリや計算能力は大きく異なります。
最初から最適な構成を判断することは簡単ではありません。
そこで有効なのが、GPUクラウドを利用した事前検証です。

まずGPUクラウドでAIモデルを動かし、
「どれくらいのGPUメモリが必要なのか」
「処理速度は十分なのか」
「GPUを何枚使用すればよいのか」
「毎月のGPU利用料金はいくらになるのか」
を確認します。
その結果をもとに、自社GPUサーバーを購入するか、GPUクラウドを継続利用するか判断できます。
特にAIエージェントでは、利用者数やAIモデルの呼び出し回数によって必要な計算能力が変わります。
小規模な試験運用から始め、実際の利用状況を確認してから設備投資する方が合理的な場合があります。

GPUSOROBANならNVIDIA B200を必要な分だけ利用できる

株式会社ハイレゾが提供するGPUクラウドサービス**「GPUSOROBAN」**では、NVIDIA B200を搭載した計算クラスターを利用できます。
計算クラスターの共用プランでは、GPU1枚・1分単位で利用でき、ジョブ実行時間に応じて課金されます。
また、複数GPUを使用する大規模な学習処理にも対応しています。
2026年10月16日時点の公式サイトでは、GPU1枚当たり1分22円(税込)の料金が掲載されています。なお、初回最低ポイント購入額やストレージ料金などの条件があります。業界最安級GPUクラウド | GPUSOROBAN

GPUクラウドを利用すれば、企業は高額なGPUサーバーを購入する前に、AIモデルの性能を検証できます。
また、一時的に大量の計算能力が必要になる場合にも、必要なGPUを確保する選択肢になります。
AIエージェントの導入では、CPU側で業務処理を実行し、GPUによる推論が必要になったときにGPUクラウドを利用する構成も考えられます。
ただし、実際にこのような構成を採用する場合は、GPUクラウド側の実行方式、API連携の可否、データ転送、応答速度などを確認する必要があります。

これからのAIサーバーは「GPU性能」だけで選べない

今回のAMD HelionとMicrosoft Maia 300の発表から、AIインフラの今後が見えてきます。
これまでは、AIの計算能力を高めるために高性能GPUを大量に導入する動きが中心でした。
しかしAIエージェントが普及すると、AIモデルによる推論だけでなく、業務処理、データベース連携、ファイル操作なども増加します。
そこで重要になるのが、

CPU × GPU × メモリ × ネットワーク × ソフトウェア

を組み合わせたシステム全体の最適化です。
AMDはCPUとGPUを柔軟に組み合わせるHelionを発表しました。
MicrosoftはAI推論に特化したMaia 300で、処理量と電力効率の向上を目指しています。
NVIDIAはGPUを活用したAI計算環境を、製造業や科学技術計算などへ広げています。
各社の方向性には違いがありますが、共通しているのは、
「AIをどれだけ速く動かせるか」だけでなく、「AIをどれだけ効率よく運用できるか」
という考え方です。
今後企業がAIを導入するときも、GPUの型番だけで判断するのではなく、実際の業務内容や利用頻度に合わせた計算環境を選択することが重要になります。
そして高額なGPU設備を購入する前に、GPUクラウドで必要な性能やコストを検証する方法は、ますます有効になっていくでしょう。

GPUサーバー・AI向けサーバーの導入をご検討の方へ

ウイルネットでは、GPUサーバー・AI向けサーバー・GPUクラウドの導入に関するご相談を承っております。
弊社は、株式会社ハイレゾが提供するGPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」の正規代理店です。
弊社を通じてご契約いただくことで、サービスや契約条件によっては、直接契約する場合よりも5~10%程度お安くご提供できる場合があります。
生成AIやAIエージェントの導入では、利用するAIモデルや処理内容によって必要なGPU環境が異なります。
高性能GPUサーバーを購入する方法もあれば、GPUクラウドを利用する方法もあります。
弊社では、大学・研究機関をはじめ、一般企業のお客様へのGPU関連サービスの導入実績がございます。
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「NVIDIA B200などの高性能GPUを利用したい」
「GPUサーバーを購入するか、クラウドを利用するか検討している」
といった段階からでもご相談ください。
GPUサーバー・AI向けサーバー、GPUクラウドの導入をご検討の際は、ウイルネットまでお気軽にお問い合わせください。

参考資料
今回のコラムは、2026年10月12~14日に公表された各社の公式発表を中心に作成しました。
AMD公式(2026年10月12日)
AMD Helionを発表、ラックスケールで実現するエージェント型AIコンピュート
Microsoft公式(2026年10月12日)
Azure Maia 300のアーキテクチャを解説
NVIDIA公式(2026年10月14日)
NVIDIA、半導体設計・製造向けAI技術を発表
GPUSOROBAN公式
NVIDIA B200搭載「計算クラスター」

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執筆・監修:株式会社ウイル 執行役員 岸本 静樹
編集協力:生成AI
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