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【第7回 AI】AI時代に注目される新しいエンジニア像とは?

AI時代の新職種「FDE」とは? エンジニアが顧客の現場に入る時代

生成AIの普及によって、新しい技術だけでなく「エンジニアの働き方」も変わり始めています。

最近、AI業界で耳にする機会が増えている職種の一つが、

FDE(Forward Deployed Engineer:フォワード・デプロイド・エンジニア)

です。

日本ではまだ馴染みの薄い名称ですが、OpenAIは現在、東京でも「Forward Deployed Engineer」を募集しています。

PalantirでもForward Deployed Software EngineerやForward Deployed AI Engineerなど、多数のFDE系ポジションを設けています。

なぜ今、AI企業がFDEを重視するのでしょうか。

その背景には、

「高性能なAIを提供するだけでは、企業の業務は変わらない」

というAI導入の難しさがあります。

FDEとは何をする人なのか

FDEを一言で表現すると、

顧客の現場に深く入り込み、課題を理解し、実際に動くシステムまで作るエンジニア

です。

一般的なソフトウェア会社では、

営業が顧客から要望を聞く
↓
要件を整理する
↓
エンジニアへ伝える
↓
システムを開発する
↓
顧客へ納品する

という流れが多いと思います。

FDEでは、この距離を大幅に縮めます。

エンジニア自身が顧客と話し、

「本当に困っていることは何なのか」

「AIをどの業務に使えば効果があるのか」

「既存システムとどう連携するのか」

を理解し、その場で試作・開発・改善まで行います。

つまり、

営業・コンサルタント・SE・ソフトウェアエンジニアの境界を越えて仕事をする

ような職種です。

FDEという考え方を広めたPalantir

FDEという働き方でよく知られている企業が、米国のPalantir Technologiesです。

Palantirは現在も、Forward Deployed Software Engineer、Forward Deployed AI Engineer、Forward Deployed Infrastructure Engineerなど、多数の関連職種を募集しています。

Palantirのソフトウェアは、政府機関や企業が複雑なデータを分析し、意思決定するために利用されています。

しかし、どれほど高度なソフトウェアを作っても、それを顧客へ渡しただけで問題が解決するとは限りません。

企業ごとに、

データの形式
業務フロー
既存システム
セキュリティ要件
社内ルール

が違うからです。

そこで、エンジニアが顧客の業務に深く入り込み、現場でソフトウェアを適用していくスタイルが重要になりました。

現在のPalantirの採用情報を見ても、商用・政府向けの双方で多くのForward Deployed職が存在しており、このモデルが同社の事業の中心にあることが分かります。

なぜ生成AI時代にFDEが注目されるのか

この考え方は生成AIとの相性が非常によいものです。

例えば企業が、

「生成AIを導入したい」

と考えたとします。

しかし実際には、

「何に使えばよいのか分からない」

というところから始まる会社も少なくありません。

ChatGPTを導入しただけでは、企業の生産性が自動的に向上するわけではありません。

例えば営業会社なら、

顧客データ
商談履歴
見積書
営業日報
商品情報

などとAIを連携する必要があります。

製造会社なら、

設計情報
製造データ
品質データ
画像データ
設備データ

などとの連携が考えられます。

ここではAIモデルの知識だけでなく、その会社の業務そのものを理解する能力が必要になります。

その役割を担うのがFDEです。

OpenAIも東京でFDEを募集

この流れを象徴しているのがOpenAIです。

OpenAIは現在、東京を含む世界各地でForward Deployed Engineerを募集しています。

東京のFDEについてOpenAIは、顧客とともに最先端AIモデルを実際の本番システムへ導入し、

課題発見 → 技術要件整理 → システム設計 → 開発 → 本番導入

までを一貫して担当する役割だと説明しています。

さらに、顧客の現場で得られた情報をOpenAIの製品・研究チームへフィードバックすることもFDEの仕事です。

これは非常に重要なポイントです。

FDEは単なる「導入支援担当」ではありません。

顧客の課題を理解してシステムを作るだけでなく、

顧客の現場から得た課題を、次のAI製品へ反映させる役割

も持っています。

従来のSEとの違いは?

日本企業には以前から「SE(システムエンジニア)」という職種があります。

そのため、

「FDEとSEは何が違うのか」

と思われる方もいるでしょう。

実際には重なる部分も多くあります。

ただしFDEでは、より強く求められる特徴があります。

それが、

顧客の現場で自分でコードを書くこと

です。

一般的なITプロジェクトでは、

営業
ITコンサルタント
プロジェクトマネージャー
SE
プログラマー

など役割を分けることがあります。

FDEはその境界をまたぎます。

顧客の経営層と話し、現場担当者から業務を聞き、システムを設計し、自分自身でもプログラムを書く。

OpenAIの東京FDE求人でも、PythonやJavaScriptなどを使ってプロダクション品質のコードを書けることが求められています。

AI時代は「作る能力」より「使える形にする能力」が重要になる

生成AIの進化によって、プログラムを作ること自体のハードルは下がりつつあります。

AIに、

「顧客管理システムを作って」

「このデータを分析するプログラムを書いて」

と指示すれば、ある程度のコードを生成できるようになりました。

ではエンジニアは不要になるのでしょうか。

むしろ逆かもしれません。

AIがコードを書けるようになるほど重要になるのは、

「何を作るべきなのかを判断できる人」

です。

顧客自身も、自分の業務のどこにAIを使えばよいのか分からないケースがあります。

そこでFDEが現場に入り、

業務を見る
↓
課題を発見する
↓
AIで解決できる部分を選ぶ
↓
すぐ試作品を作る
↓
現場で試す
↓
改善する

というサイクルを高速で回します。

AI時代には、この能力の価値が高くなっていくと考えられます。

FDEに必要なのは「技術力だけ」ではない

FDEにはもちろん高い技術力が求められます。

しかしプログラミングだけできればよいわけではありません。

必要になるのは、

技術力 × 業務理解 × コミュニケーション力

です。

例えば製造会社へ入るFDEなら、製造業について学ぶ必要があります。

金融機関なら金融業務を理解しなければなりません。

医療分野なら医療現場の業務や規制も理解する必要があります。

OpenAIでも現在、金融、医療、法律など特定業界を対象としたFDEを募集しています。

つまり今後は、

「AIだけ詳しい技術者」

よりも、

「業界の課題を理解し、AIで解決できる技術者」

の価値が高くなる可能性があります。

FDEとGPUにはどんな関係があるのか

ここで、このコラムのテーマであるGPUともつながってきます。

企業専用AIを作る場合、

LLM
RAG
画像認識
生成AI
動画解析
シミュレーション

など、用途によって必要な計算環境が大きく異なります。

FDEがAIシステムを設計すると、

「この処理ならAPIで十分」

「このAIモデルはGPUクラウドで動かす」

「機密データなので自社GPUサーバーで処理する」

「学習時だけ大量のGPUを使用する」

といったインフラ判断も必要になります。

つまり、AI導入を本格化させると、

AIアプリケーションとGPUインフラを別々に考えることが難しくなります。

どのAIモデルを使うのか。

どのGPUを使うのか。

クラウドかオンプレミスか。

GPUメモリはどの程度必要なのか。

運用コストはいくらになるのか。

こうした判断まで含めて設計することが、AIシステム構築では重要になります。

日本企業にもFDE的な人材が必要になる

今後、日本企業でもFDEという職種名を使うかどうかにかかわらず、FDE的な役割を担う人材は増えていくのではないでしょうか。

特に中小企業では、

「AI担当者」

「IT担当者」

「システム会社」

が完全に分かれているより、

業務を理解しながらAIシステムを素早く作れる人材の方が、AI導入を進めやすい場合があります。

重要なのは、

AIを導入することではなく、AIを使って業務を変えることです。

FDEという職種が注目されている背景には、まさにこの違いがあります。

AIモデルの性能競争だけではなく、

「そのAIを現場で誰が使える状態にするのか」

という競争が始まっているのです。

AI時代はエンジニアの仕事も変わる

これまでエンジニアというと、

「パソコンに向かってプログラムを書く人」

というイメージがあったかもしれません。

しかしFDEは正反対ともいえる働き方です。

顧客と話し、

現場へ行き、

業務を理解し、

問題を見つけ、

その場で技術を使って解決する。

生成AIがプログラミングを支援する時代だからこそ、人間のエンジニアには現場とAIをつなぐ能力が求められていくのかもしれません。

今後AI業界を見る際には、

NVIDIAの新しいGPU
新しい生成AIモデル
AIデータセンター

だけでなく、

「AIを企業へ実装する人材」

にも注目しておきたいところです。

FDEは、AI時代を象徴する職種の一つになりそうです。

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執筆・監修:株式会社ウイル 執行役員 岸本 静樹
編集協力:生成AI
岸本

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